教案は必要か?

 日本語教師養成講座で実践演習をする学生には教案(授業計画)を提出してもらいます。提出は授業前の場合と授業終了後の場合があり、講座によって違いがあります。教案はもともと授業をする教師が自分の授業計画のために書くものですが、これを提出してもらうことによって受講生の演習授業をチェックする際に、コメントがしやすくなります。

 演習授業をする人の中には、おおぜいの人の前で話すのは初めてという人もいます。ですから、初めて演習の授業をした時にうまく教えることができず、導入も練習も失敗に終わってしまったという方がいます。授業が終わってから、

「頭が真っ白になった」「パニックになった」「自分で何をやっているのかわからなくなった」

という感想をよく聞きます。そんな場合でも、授業前に提出してもらった教案を見ればその受講生が何をしようとしていたかが分かるので、きちんと教案が書けていたのに本番ではうまく行かなかったのか、それとももともと教案が十分に書けていなくて、準備不足が原因だったのかの判断ができます。実践演習では、受講生から

「教案は何枚ぐらい書けばいいですか?」「1回の授業の教案を書くのに何分ぐらいかかりますか?」「教案は必ず書かないといけませんか?」

といった質問をよく聞きます。教案に関しては人それぞれスタイルがあります。きちんとしたものを書こうとすればそれなりに時間がかかります。ただ、何枚とか何分ぐらいとかいう数字では表せないものなので、自分が納得できるまで書いてくださいとしか言いようがありません。何度か演習の授業をしているうちに自分のスタイルができてくるでしょう。

 ただ、「教案は必ず書かないといけませんか?」という質問に対しては、100%「はい。」という答えになります。経験のある教師だったら、授業の流れや教える内容も頭に入っていますから書かなくてもできるでしょうが、初めて教える人は教案がなければ教えられないからです。特に、初級を直説法で教える場合は細かい教案が必要です。教室に入る前の準備段階から含めて、教室に入ってからの活動すべてをきちんと計画しておかないと、授業が成立しないことになります。

 直説法は日本語で日本語を教える方法ですから、教える対象が初めて日本語を習う学生の場合は学生が日本語を聞いても全く理解できません。ですから、「日本語で説明する」ということができないのです。ということは、教師が講義形式でずっと話し続けて授業を成立させるというやり方が成り立ちません(教師が話し続けても学生には先生が何を話しているのか全く分かりません)。

 日本語が分かる学生を相手に教えるのであれば、「はじめにこんな話をして、次にこんな説明をして・・・」という簡単な流れを考えておくだけで授業が可能な場合もあるでしょう。しかし、初級のはじめは「話」をすることも、「説明」をすることもできません。そこをどうやって教えるのか、与えられた授業時間をどのように進めるのか、ということを計画するために教案が必要になってくるわけです。

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