丁寧体を習得する

 日本語学習者は一般的なテキストに沿って学習をすると、「です・ます」の形の丁寧体から学び始め、そのあと「~だ・~する」という形の普通体を学びます。丁寧体を勉強している間は、学校外で話されている普通体を聞いてもあまり理解することはできません。また、普通体を学んだあとでも、学校外での実際の会話は教科書に書かれているような普通体ではなく、方言で話されているので、やはり理解するのは簡単ではありません。

 それでも、テキストに沿ってきちんと勉強した学生は丁寧体と普通体の2つのスタイルを何とか身に付けていきます。この2つのスタイルを区別して使えるというのは日本語学習者にとって非常に重要なことです。

 というのは、テキストに沿った勉強をしないで、日本で生活しながら日本人との会話の中で自然と日本語を覚えた人の中には、丁寧体と普通体の2つのスタイルのうち、普通体しか使えないという人がいるからです。

 普段の生活では普通体の会話がよく使われているので、来日した外国人はそれを聞いてそのまま覚えてしまうわけです。ですから、彼らの日本語は普通体でしかも方言がかなり混じった話し方になります。

 このような形の日本語習得には2つ問題があります。1つは、教師による適切な指導を受けていないので、どれが共通語でどれが方言かが意識して区別できていないという問題です。しかしそれより問題なのは、丁寧体を習得できていなので、丁寧体を使うべき場面でも普通体で話してしまい、本人が意図していないにもかかわらず、「失礼な」外国人だという印象を相手に与えてしまうことです。

 本人は、自分がきちんとした日本語を話していない、ということは分かっているのですが、長い間それで通してきたので、ある程度コミュニケーションがとれるレベルまでは達しているわけです。
 こういうタイプの学生さんが、「一度学校できちんと勉強しておきたい」と言って入学手続きに来られることがありますが、その際の受付での会話は、

「いつ日本に来られたんですか」
「5年前来た。ずっと仕事してたよ。」
「日本語学校で勉強されたことはありますか」
「全然ない。忙しいだったからね」
「平仮名は分かりますか」
「わかる、わかる。それは問題ない。でも、文法メチャクチャやから」

のような感じになります(いろいろな日本語のレベルの方がいらっしゃいますが、あえて特徴が出るように書きました)。

 もし本人が、通じればどんな日本語でもいいという考えの方なら構わないのですが、「場面に応じてきちんとした日本語を話したい」と思っている方であれば、早い機会に丁寧体というスタイルを身に付けることが大切だと思います。

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