文字カードが有効な語形練習

 パターン練習を退屈しないようにするには練習方法に変化を付ける必要があります。その方法として、前回は、「文字→絵→文字→絵」と変えることで、同じ練習内容でも目に写る情報を変えることで新鮮さを出すことができるという話をしました。その中で、一般的には絵のほうが情報量が多く場面を想像しやすいので、目に映る情報が乏しい文字カードでの練習を長く続けると退屈しやすいと書きましたが、今回は、絵よりも文字カードを使ったほうがいい場合を考えてみます。

 動詞の「て形」を作る語形変化の練習をもう一度見てみましょう。まず、教師が「読みます」というキューを出し、学生に「読んで」と言わせます。この際の教師のキューですが、口頭だけで「読みます」と言って何も見せない場合は、学生は注意を向ける対象がありません。しかし、ここで文字カードを見せると、学生の注意をそこに引き付けることができます。このように教材(文字カード)で学生の注意を引き付けることができるというのが1つ目のメリットです。

 しかし、語形変化の練習で文字カードを使うメリットは、そこに注意を引き付けるということ以外に、もう1つあります。それは、語形変化を学生が誤った場合に、「ここに注意して語形変化をするのだ」ということを学生に示すために、すぐに文字カードの文字を指し示すことができるということです。

 もし学生が「読みます」→「読みて」のような誤りをしたら、教師は文字カードの「読みます」の「み」の文字を指して、「ここは『み』ですよ。『み』は『んで』です。」とルールを説明することができるのです。これが絵カードだと、口頭で言うか、板書するかになります。口頭だとルールが目に見えないし、板書だと書いている間にいったん練習リズムが失われます。このように、語形変化のルールを目で見て確認しやすいというのが文字カードの特徴です。

 形容詞の変化でも同様です。「あつい」→「あつくない」のような変化を練習していて、学生が「あついじゃない」のような誤用をしたら、やはり教師は「あつい」という文字カードの「い」を指し示して、「ここは『い』です。『い』は『くない』ですよ」と説明することができます。「いい」→「いくない」のような誤用があれば、はじめの『い』を指して、「ここの『い』は『よ』です。」と説明できます。

 文字カードは絵カードに比べて情報量が少なく、文字だけを見せ続けると単調になってきますが、今述べたように語形変化のルールを説明する際には便利です。前回書いたように「絵→文字→絵→文字」のように視覚的な変化を付けて、絵カード、文字カード、それぞれの長所を活かしパターン練習を組み立てるといいでしょう。

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