練習はまずリピートから

 日本語の文法を教えて会話ができるように指導するためには、

1.その文法の意味を理解させる。
2.その文法を口に出して練習させる。

の2段階があります。最初の理解させる段階は、日本語教育では導入と呼ばれています。新人の先生はこの部分に多くのエネルギーを費やすことが多いようですが、その一方、2番目の口に出して練習させる段階のほうは、その重要性があまり意識されていないように見受けられます。

 順番としては文法の意味をまず正しく理解しないと始まらないのですから、導入が重要と考えるのは当然と言えるでしょう。しかし、せっかく文法の意味を理解しても練習しないと使えるようにならないのですから、限られた授業時間でできるだけ口に出して言う練習をする必要があります。では、どんな手順で練習すればいいでしょうか。

 教師養成講座でよく見るのは、新しい文法を教えたら、早速それを使って学生に質問するというやり方です。例えば、「毎朝パンを食べます」という文法を教えたとします(ここでは「名詞+を+たべます」という形で文法を理解させます)。受講生の中にはこのあとすぐに、

「Aさんは毎朝パンを食べますか」

という質問をしてしまう方がいるのですが、これは順番としてまだ早いです。練習もなく、いきなり「毎朝パンを食べますか」と聞かれても答えられるはずがありません。意味を教えたあとにするべきことは、教師の話す文のリピートです。なぜリピートから始めるかと言うと、

・教師の正しい発音・イントネーションをまず聞いて、それを真似する。

ということが会話のためには大事だからです。新しく教えた文法を、どのような発音・イントネーションで、どのような速さで話すのか、というモデルを教師がまず示さなければなりません。そのモデルがなければ学生はどう発音していいか分かりません。まず正しいモデルを教師が示し、学生がその真似をする。何度もモデルを示し、何度もリピートさせる。そうやって教師の真似をすることが会話のための基礎になります。

 こうして書いてみると当たり前のようですが、受講生の方は文法の意味を教えるのに一生懸命で、導入が終わったらすぐに質問に入ってしまうということが少なくありません。「意味を教えたらすぐ話せるようになる」というわけにはいかないので、しっかりと教師のモデルをリピートさせることから始めましょう。

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