養成講座で授業計画を作る際には「学生が日本語を学習する目的」をまず考える必要があります。代表的な例としては、ビジネス・仕事場で必要、日本での留学生活に必要、地域社会で円滑なコミュニケーションをとるために必要、などが挙げられます。
これとは別に、語学の能力には「話す」「聞く」「読む」「書く」の4技能がありますが、このうち学生はどの技能を伸ばそうとしているのかという観点もあります。多くの学習者は話せるようになりたいという希望を持っていますが、漢字仮名交じりのテキストを使って学習を進める場合は、少なくとも平仮名、カタカナは読めるようにならないと授業の進行ができなくなってしまいます。
そこで、「日本語学習はまず平仮名を教えることから」と自動的に平仮名を教えることからスタートする計画を立てるかもしれません。しかし、学習者に平仮名を教える前に、もう一度学生の日本語学習目的を確認したほうがいいでしょう。
なぜかというと、平仮名だけを一通り覚えるのにも、かなりの時間がかかるからです。見たこともない文字を1つ1つ一致するまで覚えるのは、教える側が想像する以上に大変なことです。平仮名の文章が読めるまでには、
○平仮名の文字が1つ1つ認識できて音と結びつく。
○平仮名の文字がいくつか連続した、単語単位で読めるようになる。
○単語と助詞が組み合わさった、文が読めるようになる。
という段階があります。最後の段階まで進まないとテキストを使った通常の授業は難しいでしょう。ですから、教師が、さあテキストを使って日本語を教えようと思っても、レッスンが始まった当初は、学生はまだ平仮名を使った文章が読めないので、テキストを使った勉強はできないことになります。
もし漢字仮名交じりのテキストを使うということを決めたのなら、平仮名を覚えるまでの間は、「テキストを使わずに口頭練習をする時間」と「平仮名を練習する時間」とを用意して、どちらも平行しておこなっていくことになります。
さらには漢字仮名交じりのテキストを使うのなら、平仮名に加えてカタカナも覚えなければなりません。現代はカタカナの語彙が増えていますから、カタカナの重要性はますます増しています。こうして、平仮名、カタカナの習得だけでレッスンのうちのかなりの時間が費やされてしまいます。
そこで考えなければならないのは、学習者は文字の習得にそれだけの時間を費やす余裕があるのかどうかということです。例えば、短期滞在で日本に来ていて、数ヶ月で帰国するという人は滞在中に簡単な挨拶をしたり、買い物、交通機関の利用などで日本語を使うことが考えられます。こういう学習者に必要なのは、今すぐ使える日本語です。日常便利な日本語を早く覚えてしまったほうが効率的です。
にもかかわらず、今すぐ使える日本語を覚える時間を削ってまで文字を教えていては、気が付けば帰国する日が迫っていたということになりかねません。授業計画は学習者の日本語学習目的をまず確認することから始まります。
