日本語教師養成講座の受講生が実践演習をする時に気をつけることは、説明しすぎないこと、講師ができるだけ話さないようにすることです。その理由は、
○講師が話せば話すほど、学生が話す時間がなくなる。
からです。学生は会話ができるようになりたいと思って学校に来ているのですから、そのための練習をする必要があります。講義形式で講師がずっと話していては、学生の発話するチャンスはなく、会話練習ができないまま授業が終わってしまいます。
ところで、日本語を教える場合には、国内で教える場合と、海外で教える場合がありますが、「学生に発話するチャンスを与える」というのは、特に海外で教える場合は大事なことです。国内で教える場合と、海外で教える場合を比較してみると、
○日本語を聞く機会
○日本語を話す機会
どちらをとっても、圧倒的に海外のほうが少ないのは当然です。国内にいる日本語学習者は日本語のネイティブスピーカーに囲まれて生活していますから、日本語を話す機会にも恵まれています。日本人を相手に覚えた表現を使ってみることも簡単にできますし、日本人と友人になれば会話を練習することも難しくありません。
しかし、海外の日本語学習者はそう簡単に日本語のネイティブスピーカーと会話練習することはできません。ネット環境が整った国ならオンラインで話すこともできますが、そうではない地域では日本語教室の一歩外へ出ると、そこはもう現地語の環境です。町を歩いている日本人に日本語で話しかけてみる、ということも地域によってはほぼ不可能でしょう。村で唯一の日本人が日本語教師ということも珍しくありません。
海外の学習者が日本語教室の外へ出てしまうと、日本語に触れる機会が極端に少なくなるということは、日本国内で外国語を練習することを考えてみればよくわかるでしょう。日本での外国語学習の場合、英語に関しては外国語教室・外国語教材でも英語が最も多いですし、テレビ・ラジオの講座、テレビの二カ国語放送、映画やドラマのDVDやインターネットも含めて日本国内にいても英語に触れる機会は、他の外国語に比べてはるかに多くあります。しかし英語以外の外国語、あまりメジャーでない外国語になると、途端にその外国語に触れる機会は少なくなり、会話練習をする機会もほとんどなくなってしまいます。
同様に、海外では日本語は英語のようなメジャーな外国語ではありません。ですから海外の日本語学習者にとって、ネイティブの日本語教師は会話練習ができる貴重な存在です。 ネイティブが教える日本語教室は、彼らにとって会話練習ができる数少ない、場合によっては唯一の場所と言っていいでしょう。ですから、講師はできる限り学生たちと会話練習をする時間を作るよう努力する必要があります。
養成講座の受講生で、海外で教えようと思っている人は、特にこの点に注意して、いかに効率よく教室で会話練習をするか、いかに学生に発話の機会を与えるかに気を配りながら授業計画を立てるようにしましょう。
