一般的な日本語の初級テキストは、まず丁寧体から学習を始め、あとから普通体を勉強するようになっています。丁寧体から始める理由はやはり、まず丁寧な日本語を身に付けるという目的があるからでしょう。丁寧体は誰に対してどんな場面で使われるかというと、
○初めて会った人
○目上の人
○先生
○会社関係のコミュニケーション
などがあり、これらの場面で普通体を使うのは失礼だと考えられています。外国人が日本に来た場合、日本で会う日本人のほとんどは初めて会う人でしょう。ですから、外国人にとって丁寧体を使う機会は非常に多いわけです。彼らは「はじめまして」から始まる自己紹介を何度も繰り返しすることになります。こういう場面で普通体を使ってしまったら、第一印象がよくないと受け取る日本人がいるかもしれません。
一方、外国人が普通体を使う場面はいつかというと、日本人の親しくなった友だち、あるいは日本語でコミュニケーションする外国人の親しい友だちなどではないでしょうか。普通体は相手と親しくなってから使うスタイルですから、優先順位はあとまわしになります。やはりまず丁寧体を覚えて、初めて会った人にすぐ使えるようになっておく必要があります。
ところで、日本に来てすぐに普通体を使わなければならない外国人もいます。それは、日本の小学校、中学校、高校などに入学する人たちです。彼らはすぐにクラスメートと打ち解けて友だちになりたいと思っているのですが、そこで丁寧体を使って話していると、よそよそしくなってしまいます。こういう場合は急いで普通体を習得したほうがいいでしょう。
日本語のテキストが丁寧体から始まっているもう1つの理由は、前回も述べたように丁寧体のほうが語形変化がやさしいからです。テキストはやさしい文法から難しい文法へと並んでいるのが普通ですから、まず語形変化がやさしい丁寧体から学んでいくわけです。
丁寧体は語形変化はやさしいのですが、単語の長さは長くなっています。ですから、まず丁寧体から学ぶということは、結果的には初期の段階で学生は単語の長さが長い形式、つまり文全体も長い形式を話すのに慣れるということになります。初めに長い形式に慣れておけば、あとで普通体を学習した時に短い形式で話せばいいことになるので、語形変化を覚えた学生にとっては、普通体は少し負担が減ると感じるかもしれません。
反対に、初めに中途半端に普通体から覚えてしまった人は、あとで丁寧体を覚えようとした時に、文の長さが長く感じて話しにくいと思う人もいるでしょう。まず丁寧体から覚えるという順番は、時間をかけて日本語を学習できる人にとっては基礎を作るという意味でもよいのではないかと思います。
