全体の中の1部分であることを理解させる

 教師養成講座では時間的な制約のため、「学習者の既習の知識=0」から順を追って教えていくというトレーニングが十分できないという話をしました。しかし、トレーニングが全く無駄というわけではありません。トレーニングでは、授業の基本的な組立を練習することができます。さらに、「1つの文法形式はテキスト全体の中の1つ」という観点も意識させることができます。

 例えば、実践演習をする際には、少なくとも、

○教えるべき文法項目の意味をあらかじめ調べておく。
○その意味を適切に学習者に理解させる。
○理解した内容を学習者が使えるように練習する。

という段階があります。
 ある実践練習で、「~している」という表現を教えることになったとします。この場合、受講生は、テキストでこの「~している」という表現がどんな意味で使われているのか、まずその意味を調べる必要があるわけです(教える前に講座の先生がどんな意味かヒントを教えることもあるでしょう)。

 日頃は文法を意識することなく日本語を使っていますから、「~している」がどんな意味かとか、何種類の用法があるかと言われても普通の人はピンときません。けれども、外国人に教える場合は、1つ1つの用法を調べて、これはこんな意味で、こんな時に使うということをはっきり示さなければなりません。

 本来は、テキストを始めから順に教える経験をしていって、「~している」の1つ目の用法はこれ、2つ目の用法はこれ、3つ目の用法はこれ、というように「体」で覚えていけば一番いいのですが、時間の問題もあるのでそうもできません。この場合はテキストを調べていって、「頭」で用法を理解しておくだけになります。
 初級のテキストで「~している」を調べれば、

○彼は電話をしています。
○彼女は結婚しています。
○父は工場で働いています。
○窓があいています。
○休みの日はDVDを見ています。

などの用例が見つかるでしょう。
 実践演習に当たった受講生は、自分が教えることになったテキストの課の例文を見て、自分が教えるべき用法は「~している」の中のどの用法なのか、そして、それ以外の用法はいつ出てくるのかをまず確認することから始めます。その作業を通して、「1つの文法形式は、テキスト全体の中の1つ」であることを意識することができるのです。
このように、1つの形でいくつもの用法を持っている文法を受講生に担当してもらう場合は、「自分が教える項目はテキスト全体の中のどの位置にあるのか」ということを意識させるいい機会になるでしょう。

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