言葉で説明できない部分を補う

日本語を勉強している学生は、当然ながら日本語の語彙も文法もまだまだ不足しています。ですから、日本語学習者に対しては、彼らの理解できる範囲内の日本語で説明しなければなりません。その範囲を超えてしまうと、いくら教師が説明しても彼らには伝わりません。

 しかし、新人の先生は説明することに一生懸命になり、つい、彼らが理解できる以上の説明をしてしまいます。こうなると、学生からは「先生は一生懸命説明しているけれど、よく分からない。」という感想を持たれてしまいます。学生に分かるように、簡潔に説明するためには、彼らが学習してきたのと同じように、初級の最初から1つずつ日本語の文法を学んでいくのが早道です。そうすれば、簡潔にポイントを押さえた説明ができるようになります。

 では、直説法で教える場合、初級の一番最初の段階、つまり学生が全く日本語を知らない段階の時にはどんな説明ができるのでしょうか。この場合、言葉での説明はもちろんできません。説明に使えるのは、

・絵や写真
・実物教材
・ジェスチャー

などです。例えば、「りんご」という単語を教えるのなら、りんごの絵・写真・実物が使えます。また、

「みなさん、繰り返して下さい」

とクラス全体にリピートを促す場合は、ジェスチャーが使えます。こうやって、絵を見せたり、ジェスチャーで示したりすることを繰り返しているうちに、学生もだんだん慣れてきて、先生がこのジェスチャーをしたら、こういう指示をしているのだという共通理解ができてきます。

 この時期にジェスチャーをする際に気をつけることは、同じ指示なら毎回同じジェスチャーをすることです。同じ「繰り返してください」という意味の指示でも先生のジェスチャーがさっきと違っていたら、学生は「今回はどういう指示だろう」と混乱してしまいます。学生から見て、「このジェスチャーだったら、この指示なのだ」とすぐ理解できるように、いくつかの型を決めてしまうとよいでしょう。

 絵や写真、実物教材、ジェスチャーなどを、言葉で説明できない部分を補う手段としてあげましたが、これらに加えてもう1つ大事なものがあります。それは、言葉で説明できない部分を「場面で示す」というやり方です。この、場面で示すというやり方は、この先もずっと有効な方法で、特に新しい文法を教える時、いわゆる文型導入の際に重要な役割を果たします。

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