教室外の「普通体」の会話

 国内で日本語学習を始めた学習者が、

「先生が話す日本語はわかるが、教室外の日本語がなかなかわからない」

と言う理由のうち、1つは、学校内で教えている日本語は共通語としての日本語だが、教室外で話されている日本語は方言だから、というのがありました。今回はもう1つの理由、

「教室外で聞く日本語には、「です・ます体」ではないものがある」

についてです。
学生が耳にする日本人同士の会話、例えば、電車やバスの中での会話、スーパーやデパートの買い物客同士の会話、道を歩いている人々の会話、アルバイト先の日本人学生たちの会話、家で見るテレビドラマの会話などで使われているのは、

「昨日の映画どうだった?」
「おもしろかった」

のようなスタイルがほとんどです。一方、日本語学習者はまず丁寧な話し方である「です・ます」から学び始めるのが普通です。この「です・ます」で話すスタイルのことを日本語教育の現場では「丁寧体」と呼んでいます。上の会話を丁寧体に変えると、

「昨日の映画はどうでしたか」
「おもしろかったです」

のようになります。これに対し、「どうだった?」「よかった」のようなスタイルは「普通体」と呼んでいます。
 日本語学習者が勉強を始める時は、丁寧体からスタートし、そのあとから「どうだった?」「よかった」のような普通体を学習するのが一般的ですから、丁寧体のスタイルを勉強中の学生は、教室外で話されている普通体の会話を聞いてもよく分からないということになるわけです。

 では、日本語学習者はテキストで普通体を学習すれば、日本人の会話が聞いてわかるようになるかというと、そう簡単ではありません。日本語学習者にとって問題なのは、教室外で話されている普通体の会話は上に書いたような会話ではなく、方言になっていることです。大阪の日本語学習者なら、日本の高校生が電車の中で、

「昨日の映画、どやった?」
「おもろかったで」

という会話をしているのを聞いているはずです。ですから、せっかく普通体のスタイルをテキストで学習しても、教科書に書いてあるような「普通体」の会話を学生が実際に耳にするのは、テレビドラマの中と、日本語テキストの付属CDぐらいということになります。ともかく、教室外ではテキストにあるような「です・ます体」を聞く機会は少ないのです。

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