学習者の目的を知る

 養成講座で実践練習をする際は、簡単に分けて、

○教えるべき文法項目の意味をあらかじめ調べておく。
○その意味を適切に学習者に理解させる。
○理解した内容を学習者が使えるように練習する。

という段階がありますが、そのうちの文法項目の意味を調べることについて昨日触れました。次は、その調べた意味を適切に学習者に理解させる段階です。理解させる段階は、実際の教室活動をどうするかということですから、教師が教室に入ってからどう教えるのかという計画を立てる段階と言うことができます。

 この授業計画のことを養成講座では教案と呼んでいます。新人の講師はこの教案を書くことが基本中の基本になります。しかし、教案を書く前に考えなければならない問題があります。それは、日本語を学ぼうとする学生の目的は何かという、もっと根本的な問題です。この学生の目的によって、授業計画も変わってくるからです。

 学習者の日本語学習目的に関して、実践練習から少し離れて考えてみましょう。これまでは文法をきちんと理解することが大事だという話をしてきました。文法に関して言えば、学習者が日本語を学ぶ目的が変わったからといって、日本語の文法構造そのものが変わるわけではありません。しかし、日本語を使う目的によって、文法の使い方が変わったり、語彙が変わったりすることはごく普通のことです。

○親しい友だちと雑談する。
○上司と仕事の話をする。

 この2つの例からも、目的によって、文法の使い方や使われる語彙が異なってくることが簡単に分かると思います。文法の面では、前者は「~だ」「~する」というスタイルで、後者は「~です」「~します」という明らかに異なったスタイルです。また、語彙の面から言えば、前者は日常のいろいろな語彙を幅広く知っている必要があるのに対し、後者は、その所属している会社、さらにはその部署で共通に使用される特定の語彙を知っていなければなりません。

 授業計画でまず必要なことは、日本語学習者が何を目的として日本語を学ぶのかを調べるということです。目的が分かれば、どんな文法・どんな語彙を教えるのかが決まってきます。そこからテキスト選びも変わってきます。ビジネス日本語を学ぼうとしている外国人に、大学の留学生用のテキストを持って行くことはできません。

 その他にも、到達目標(どのぐらいのレベルまでを必要としているのか)や、その目標までに残された時間など、授業計画の段階ではいくつも考慮しなければならない問題があります。しかし、養成講座での実践練習の段階では、最低でも「学生が日本語を学習する目的」を頭に入れて授業計画を立てることに気をつける必要があります。

タイトルとURLをコピーしました