場面を設定して誤解をなくす

 外国人に日本語を教える場合、媒介語(英語が理解できる学生に英語を使って教える場合は、媒介語は英語)を使って教えることを間接法、日本語だけで日本語を教えることを直説法と言います。直説法で日本語を教える場合は、学習者が理解できる範囲の単語や文法を使って日本語を教えることになるのですが、学習者の日本語がまだ初期の段階の場合は、「日本語で説明する」ということがなかなかできません。こういう場合は、

・絵や写真
・実物教材
・ジェスチャー

などを使って説明していきます。そして、もう1つ忘れてはならない方法は、

・場面を作って意味を説明する。

という方法です。なぜ場面を作るのが大事かというと、どんな場面で使うのかということを示さなければ、教師が意図したことと違う意味が学生に伝わってしまうことがあるからです。養成講座の実践演習でよく見る例を1つあげてみましょう。

「あげます」という動詞を教えるとします。この動詞はたいてい「もらいます」とセットで出てきます。そこで、演習をする人は、あげたりもらったりする動作を練習しながら教えることを考えます。

 あげたりもらったりする練習はそれで問題ないのですが、練習の前にまず動詞「あげます」「もらいます」の導入(「あげます」「もらいます」という動詞の意味を教えること)をしなければなりません。それで、演習をする人はどんな導入をするかというと、多くの場合、チョコレートやキャンディーなどの実物を持ってきて、

「私は○○さんにチョコレートをあげます」

と言いながら、一人の学生にあげたり、複数の学生に順番にあげていくというやり方をします。これは実物(チョコレート)とジェスチャー(あげる動作)の組み合わせによる導入です。しかし、この導入ではたして学生に「あげる」という動詞の意味が伝わるでしょうか。授業を聞いている学生はおそらく、

「先生は一人の学生にチョコレートを渡した」
「先生は私たち学生にチョコレートを配った」

というように解釈するのではないでしょうか。教師が「あげる」の意味で教えているつもりなのに、学生は同じ動作を「渡す」や「配る」ととらえるのです。なぜこのような解釈の違いが起こるかというと、場面が設定されていないからです。「あげます」を教える場合は、だれが見ても「あげます」だと理解するような場面を作る必要があるということです。

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