国内在住の外国人が自然と日本語を身に付けた場合、普通体をよく使う傾向があるのですが、そうなる理由として、普通体のほうが形が短いからではないかということを話しました。例えば、「食べる」という動詞の丁寧体の変化は、
「たべます・たべません・たべました・たべませんでした」
で、普通体だと、
「たべる・たべない・たべた・たべなかった」
です。並べて書いてみると、普通体のほうが短いことが分かります。
しかし、形は短くても語形変化は一般に丁寧体よりも普通体のほうが複雑です。ですから、きちんとした文法を勉強しないでずっと普通体を使ってきた外国人の日本語は、助詞だけでなく、動詞の変化の誤りも多く見られます。
普通体と丁寧体の長さの比較をするために、上では動詞「食べる」を出しましたが、「食べる」は動詞の変化としてはやさしいものに入ります。この動詞では、丁寧体と普通体の難しさの比較ができないので、語形変化が難しい他の動詞の例を1つ見てみましょう。
「読む」という動詞の変化は、丁寧体の場合、
「よみます・よみません・よみました・よみませんでした」
となります。最初の「よみ」は4つの形に全て共通しています。ところが、普通体の場合は、
「よむ・よまない・よんだ・よまなかった」
となり、はじめの「よ」は共通ですが、肯定の時は「よむ」、否定の時は「よま」、過去の時は「よん」、というように形が変化します。肯定か否定か、過去か現在かで形を変える必要があることが分かります。これが丁寧体と違って普通体の難しいところです。
しかも、普通体の動詞の過去形は全て「よんだ」のように「ん」にすればいいかというと、そうではありません。「書く」だったら「かいた」のように「ん」ではなく、「い」が出てきます。このように、普通体を使うには動詞の変化をそれぞれ覚える作業をしていかなければなりません。普通体は形が短いとは言っても、決して使うのが易しいわけではないのです。
初級のテキストは、やさしい文法から難しい文法へと並んでいます。そして、今説明した動詞の変化というのは初級の文法の中では難しいほうに入りますから、動詞の変化が必要な普通体という話し方のスタイルは順番としてはあとから出てくることになります。
