普通体が使いやすい理由

 学習者が間違った文法を何年も使い続けると、それが固定化してしまいます。そうなると、少し教師が訂正したぐらいではなかなか直りません。一度習慣化してしまったものを変えることは難しいのが現実です。

 こういう例として、日本で生活が長い外国人が普通体だけを身に付けてしまい、丁寧体と呼ばれる「です・ます体」をあとから覚えようとしてもなかなか覚えられないということを話しました。普通体を覚えてしまうのは、彼らの日常生活では普通体を聞く機会が多いからではないかと思いますが、今回は文法的な理由を考えてみます。

 文法面から考えると、普通体は単語レベルでも文レベルでも丁寧体よりも短くなります。そのため丁寧体よりも言いやすいということが言えるでしょう。例えば、「食べる」という動詞の丁寧体の変化は、

「食べます・食べません・食べました・食べませんでした」

となります。これが普通体だと、

「食べる・食べない・食べた・食べなかった」

のようになります。また、名詞の「雨」の変化は、丁寧体だと、

「雨です・雨ではありません・雨でした・雨ではありませんでした」

ですが、普通体だと、

「雨だ・雨じゃない・雨だった・雨じゃなかった」

という変化になります。このように、普通体だと1つの単語が短くなります。そして、これが文レベルになると、もっと差が出てきます。例えば、丁寧体の文の、

「きのうの晩、何を食べましたか?」

という文は、普通体だと、

「きのうの晩、何食べた?」

というように、動詞の形が短くなるだけでなく、助詞の「を」と疑問を表す最後の「か」も省略されてしまいます。

このように、普通体は丁寧体よりも短いし、外国人学習者の苦手な助詞を省略できる場合があるので、こちらのほうが言いやすいのでしょう(ただ、動詞の変化の形の作り方に関しては、丁寧体よりも普通体のほうが難しいのですが、これは今は置いておきます)。

 簡単で短いという理由で普通体だけを覚えてしまい、丁寧体を習得しないままになってしまうと、あとで覚えるのが大変になるので、教科書どおり丁寧体をまずはきちんと指導するということが大切です。

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