直説法で初級の一番はじめを教える場合、「日本語で説明する」ということができません(学生が日本語を聞いても理解できないので)。教師がずっと話し続けて授業を成立させるという一般的な講義スタイルが成り立たない以上、教師は他の方法で授業をしなければなりません。そして、学生の日本語学習目的が「会話ができるようになること」である場合は、学生に会話練習をさせる必要があります。
・単語や文法を教える。
・会話の練習をする。
・しかし、日本語での説明はできない。
直説法による初級の一番はじめは、こういう難しい条件のもとで授業を進めなければなりません。では、具体的にどうやって授業を進めればいいのでしょうか。
前にも書きましたが、この段階では、「絵や写真」「実物」「ジェスチャー」そして「場面」などを使って意味を教えていきます。中でも最もよく利用するのは絵教材でしょう。市販の教材には何百枚という絵カードがセットになっています。また、絵カードだけでなく、初級の授業に役立つ便利な教材キットも販売されています。こうした教材を使うことで、日本語で説明できない部分を補っていくことが可能になります。しかし、授業で教材を使うということは、
・あらかじめ教材を準備しておく(絵、写真、実物、おもちゃ等の選択や教材サイズ)。
・準備した教材を、いつ、どのタイミングで提示するかを決めておく。
・その教材をどのように使うのか(教材を使う手順と方法)を決めておく。
・その教材をどのタイミングで回収するかを決めておく。
などの計画をしておかなければなりません。もし計画がなければ、せっかく立派な教材があっても生かせないことになります。教材は適切なタイミングで効果的に提示することで最も効果があがります。そのタイミングがどこなのかが大事なわけです。
例えば、最初の授業で「国名」を教えるとします。そして、使用教材として、世界地図と国旗を使うと決めたとします。次の準備は何になるでしょうか。それは世界地図はいつ、どのように使うのか、国旗はいつ、どのように使うのか、また国旗と言っても具体的にどの国の国旗を使うのか、などを決めていくことです。
世界地図を使うのなら、授業をする教室に既に世界地図が貼ってあるのかどうかの確認から始まります。貼ってあるのなら、その世界地図が授業に適したものなのかどうかの確認。もし貼っていないのなら、自分で世界地図を準備しなければなりません。
自分で用意した世界地図を使うのなら、それをあらかじめ壁に貼っておくのか、それとも国名を教える時に手早く黒板に貼るのか、ということも決めておく必要があります。さらに、黒板にはどうやって貼るのか(マグネットで貼るなら、黒板がマグネットに対応しているかどうか、マグネットは地図が落ちない程度の強度があるのか、テープで貼るなら用意したテープで確実に貼れるかどうか)ということも考えておかないと、教室に入ってから困ることになります。また、世界地図を使って教えるということをさらに詳しく考えると、「世界地図にある国を指しながら教える」ということになりますから、「指し棒も準備したほうがいい」ということもわかります。
こういった準備を進めるためには、教案が不可欠ですし、教案のフォームには「教材」という欄も必要になることがわかるでしょう。
