「日本語で説明できる=教えやすい?」

 養成講座を修了したばかりの新人が日本語学校に採用された場合、初級のゼロレベルではなく、初級の後半や中級の担当になることがあります。これは、初級の後半や中級が「日本語で説明しやすい」と考えられているからでしょう。

 直説法で教える場合、日本語がまったくゼロの外国人に対しては日本語で説明することができません。ですから、この部分を新人の先生が教えようとしても、なかなか難しい面があります。そこで、ある程度学生が日本語での説明を聞けるようになった段階から、まず経験をさせようということになるのだと思います。

 しかし、日本語学習者が教師の日本語による説明をある程度聞けるレベルになっていたとしても、それがそのまま教師が教えやすいということにはなりません。いくら教師が説明したとしても、それが学生の求めているものと違っていては説明したことにはならないからです。

 例えば、養成講座を修了して初めて教壇に立つ先生が中級を教えることになったとします。学生は初級を終了しているので、基本的な日本語は聞いたり話したりできるようになっています。ですから教える先生は、日本語で説明できるのですが、問題は「何を説明するか」です。初級が終わって、これから中級を学び始める学生が求めているものは何かというと、

○この中級のテキストに出て来る文法はどんな意味で、それは初級で習った文法とどう違うのか?

ということです。学生は初級の間に数多くの文法を勉強しています。そして、中級でまた新しい文法を次々と勉強します。中級で学習するこれらの新しい文法は、学生から見ればこれまで初級で習ってきた文法とよく似ているように感じるものもあります。こういう場合、学生が知りたいのは、この2つの文法の意味の違いは何か、どうやってこの2つの文法を使い分けるのか、ということです。

 教師がこれを説明するためには、3つのことが必要です。

1.初級で習った文法の意味を理解していること。

2.今から教えようとしている中級の文法の意味を理解していること。

この2つが分かれば、あとは、

3.この2つの違いを分かりやすく説明すること。

です。通常は「3」の段階の説明をいろいろと工夫するところですが、新人の先生は「3」以前に、「1」の段階があやふやになっています。ここがはっきりしないと、学生に対してきちんとした説明ができません。「学生が日本語で説明を聞くことができる」という理由だけで教師が説明しやすくなるというわけではないということです。

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