聞いたことを実践して定着させる

 日本語教師養成講座には理論と実践あります。実践では、教壇に立って教える練習をします。この模擬演習は、受講生に順番に担当してもらうことになっています。あくまで講座の中での練習ですから、本物の外国人学習者に教えるのではありません。当日教壇に立って教える受講生以外は外国人の名札を付けて外国人学生の役になり、模擬演習を担当することになった受講生は、まだ日本語が十分わからないというふりをしている「学生」に対して、授業をするわけです。
 講師側は、模擬演習の前に受講生に対して、今回授業を担当してもらう部分について、
○ここで教える日本語文法はどういう意味なのか。
○教える際にはどこに注意するべきか。
○学生からはどんな質問が出やすいのか。
などを説明しておきます。
この説明は当日の演習担当者だけではなく、受講している学生全員が聞いています。特に大事なのは文法理解で、教科書に出て来る個々の文法についてはしっかり覚えておいてほしいところです。
 ところが、同じ受講生でも、文法の理解度・定着度についてはバラツキがあります。ある学生は、この文法はよく覚えているが、別の文法は覚えていない、また別の学生は、というふうに、それぞれ覚えているところが違うのです。
 同じ授業を受けているのに、この違いはどこから出てくるのでしょうか?
受講生に共通して言えることは、自分が演習の授業で担当して教えた文法はよく覚えているが、他の人が担当した文法で、自分は学生役として聞いていただけだったという文法は覚えていないということです。
 模擬演習を担当し、実際に教壇に立って教えたということは、

○必死になって教えるべき部分を勉強して、アイデアを考えた。
○材料を準備して、授業の組立を考えて、時間配分も計算した。
○準備したことを、実際に教壇に立ってやってみた。
○模擬演習後に、授業を聞いた学生からフィードバックをもらい、講師からもコメントをもらった。

という一連の流れを経ています。これだけ準備と実践をすれば簡単には忘れないでしょう。
 これに対して、ただ「授業を聞いただけ」だと、演習というアウトプットをしないので、あとになって「聞いたはずなのに覚えていなかった」ということになってしまいます。
「授業を聞いた」と、「聞いたことを実践した」と違いは、あとで大きな差となって表れます。
 受講生の文法定着度を見ていると、やはり、知識は実際にそれを実践して初めて身に付くものだということが見てとれます。ただ、残念なことに、せっかく模擬授業をして身に付けた知識も、それ1回だけで、その後使わなければ忘れていくようです。
 学んだ知識を、実践し、それを継続することが定着につながるということを演習を見るたびに感じさせられます。

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