国内で日本語学習を始めた学生は数ヶ月も勉強すると、
「先生が話す日本語はわかるが、教室外の日本語がなかなかわからない」
という不満を持つ時期が来ます。これには、大きく分けて2つの理由があります。1つは、学校内で教えている日本語は共通語としての日本語だが、教室外で話されている日本語は方言だということです。
学習を始めたばかりの頃の学生は共通語と方言の区別もつきませんから、しばらく勉強を続ければ、まわりの日本人が話している日本語分かるようになるだろうと思っていたかもしれません。しかし、日本語学習が進み、語彙も文法も増えて先生の話す日本語にも慣れてきたが、やっぱりまわりの日本人が話す日本語が分からない、という現実にぶつかります。やがて学生は、それは方言だから分からないのだということに気が付きます。
例えば、大阪で勉強している学生は、
「『へん』」は何ですか?」
という質問をしてきます。ここで教師が、
「『変』は『おかしい』の意味です」
と説明しても、学生はどうもそれは違うという表情を見せます。実はこの学生が聞きたかったのは、
「わからへん」「食べへん」
などの「へん」だったというわけです。
ところが初級も終わり、中級ぐらいになってくると、学生は大阪弁に興味を持って、「もっと教えてほしい」というリクエストしてくるようになります。学生は案外、方言を面白いと感じていることが多いようです。特に、感情が込められて使われるフレーズは学生も使いやすいようで、
「なんでやねん」「なんやそれ」
などを面白がって使っている学生も見かけます。
一方で、方言を面白がっている場合ではなく、本当に理解する必要に迫られている学生さんもいます。それは、国際結婚などでその地域に定住することが決まっていている人たちです。方言が理解できないと、家族・親戚・近所の人々との会話が理解したくてもできないので、切実なニーズです。ただ、現状は方言習得を希望する学習者の要望に応えられる学校は少ないのではないでしょうか。
