既存の知識に新しい知識を加える

 新人の講師にとって大事なのは、テキストを初めから最後まで一通り経験することです。しかし、一般的な学校ではなかなかその機会がないため、新人がなかなか順調に育たないというケースが出てきます。
 本来であれば、新人の講師は第1課からはじめて、順番に、2課、3課、4課、5課というように段階を追って教える経験をするべきです。そのメリットとして、

○学生がどのようにして新しい知識を学んで行くのかを連続して見ることができる。
○学習の開始段階で学習を軌道に乗せるコツをつかむことができる。

などをこれまであげてきました。ここからは、第1課から順番に経験することの重要性について、さらに詳しく考えてみます。
 新しいことを教えるということは、学習者の既存の知識に新しい知識を加えるということです。知識を教える仕事をする際に必要なのは、この、

○「既存の知識に新しい知識を与える」

という技術です。もし、学習者がある分野について知識がゼロである場合は、

「0+1」(この場合の「1」は1段階目のレベル)

という作業が必要です。学校教育で例えれば、幼稚園が終わった子供が学習する知識は、小学校1年生の知識です。そして1年生が終われば2年生へ、2年生が終われば3年生へ、と段階を追って学んでいくわけです。
 幼稚園が終わったばかりの子供が、小学校5年生の授業を受けたり、中学校2年生の授業を受けたりすることはできません。なぜかというと、小学校5年生の授業を受けようと思えば、小学校1年生から4年生までの知識が必要ですし、中学校2年生の授業を受けようと思えば、小学校1年生から中学校1年生までの知識が必要だからです。

 これは改めて説明するまでもないことなのですが、日本語教育の現場では、この、

「幼稚園が終わったばかりの子供に、小学校5年生の知識を教える」
あるいは、
「幼稚園が終わったばかりの子供に、中学校2年生の知識を教える」

という光景が見られることが少なくないのです。これではもちろん学生が正しく理解することはできません。学生に正しく理解させるために、

○「既存の知識に新しい知識を与える」

という技術を新人講師は早く身に付けなければなりません。

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